● キレート療法は、自閉症の治療を長引かせる。
キレート(Chelation)療法は、体内から有害ミネラルや老廃物を取り除く方法の一種で、ある種の自閉症の治療に有効とされています。
以前、TBSの「報道特集」で、自閉症の原因として水銀原因説が報道され、その治療には水銀排出キレート法が発表されて大論争が巻き起こりましたので、ご記憶の方も多いと思います。
実際、アメリカでは水銀説を根拠にした訴訟問題が起こされており、論争が再燃しています。
また、自閉症の原因には、水銀以外に鉛も関係しているといわれており、鉛を身体に取り込んだ際に生ずる学習能力の低下や異常行動を抑制するには、キレート療法が有効で、実際に治療法としてよく用いられています。
ところが今回、体内の鉛レベルの高い自閉症の患者さんには確かに有効なのですが、鉛レベルが低い場合は逆に治療を長引かせ、治療法としては問題があるのでは、との発表がありました。
この発表は、コーネル大学栄養化学及び心理学準教授Barbara Strupp氏が、環境と健康に関する医学誌Environmental
Health Perspectives(2006, Dec. issue)に報告したもので、キレート療法の是非について、改めて論議が起こっています。
研究ではラットを用い、鉛キレート療法によく使用されているsuccimer(商品名Chemet)の効果を調べました。
ちなみに、ラットも鉛を体内に取り込むと、人と同様に小児の脳の発達阻害が起こり、意識不明や、けいれんをおこし、死亡に至ります。
また少量であっても、注意障害や情緒障害、或いはIQの低下する事が知られています。
そこで、様々な量の鉛を母乳に混ぜて与え、子供のラットの体内に鉛を蓄積させました。
次にsuccimerを投与し、半年にわたってラットの注意能力、情緒性、記憶力及び学習能力を調べました。
その結果、中程度の鉛暴露のラットでは、キレート療法の効果が現れ、対照群の鉛に暴露していないラットと同程度の、学習能力を保つ事が出来ました。
また、高レベルの鉛暴露ラットでも、succimerを投与すると、情緒関係が良好となる事が確認されました。
ところが、鉛暴露の少ないラットにsuccimerを投与した場合には、認知及び情緒コントロールに悪影響が見られ、高濃度の鉛を与えたラットと同様の障害が現れる事がわかりました。
即ち、鉛が少ない状況でキレート療法を行うと、亜鉛や鉄などの身体の代謝に欠かせない金属も同時に排除され、これらの金属とのバランスが失われるため、精神的な面での悪影響が生ずると考えられるそうです。
また、重金属の体内レベルが高くない自閉症の子供に対して用いた場合には、治療期間が長くなる可能性が考えられるとの事です。
これらのことから、自閉症の子供の治療にキレート療法を実施する場合には充分に注意が必要で、鉛などの体内のレベルを充分に検証した後に、治療方針を決定すべきとの警告がなされています。
ちなみに、米国CDC(Centers for Disease Control)によると、キレート療法は血液中に1デシリッターあたり45mg以上の鉛が体内にある子供に対してのみ使用する事、とされています。
ところが、米国での臨床現場では鉛のレベルを検査することなく、キレート治療が行われているようです。
日本国内でも、キレート療法は身体から重金属や毒素を排出させるデトックス療法として、最近よく行われるようになっています。
しかし、有毒な物質を排除するだけならば良いのですが、同時に必須金属も失われる危険性がありますので、十分な注意が必要です。
このような療法を行う際には、専門の先生とよくご相談される事が肝要です。
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